東京王翠会の皆様、記念すべき第31回総会の開催おめでとうございます。
 昨年の重大トピックは、何と言ってもシンガポール代表として支部立ち上げに御尽力された中山先輩(S50)の突然の中東ドバイ転勤という出来事でした。
 立ち上げ間もなく部員も少ない海外支部ですので正直多少動揺しましたが、部員個々でコミュニケーションや飲み会、ゴルフ等も賑やかに続いておりますし、昨年7月に発足したシンガポール香川県人会とも連携したり、出張で来られる東京玉翠会員の方と仕事面でも繋がりが出来たりと、島国シンガポールで楽しく忙しい毎日を過ごしております。

 私も遂にシンガポール生活4年目に突入し、話す英語は既にシングリッシュ訛り、週末はサンダルに短パン・Tシャツと、日に日に現地化が進行しております。
 赤道直下の国ですので、畏まっても自然に汗が噴き出しますし、国民の多くが他人に干渉するのを避ける傾向がありますので、このような比較的周囲の目を気にしなくて良い風潮を生み出してしまうのでしょう。

 華人中心で自己中心的、拝金主義的なこの国で気付いた事と言えば、この国でビジネスを行う現地人が風水の世界観を持っていること。
 ビルや建物の玄関にわざわざ水槽や池を設置して、金魚や錦鯉、お金持ちなら池魚と呼ばれるアロワナを飼っています。
 事業で成功し一冊を築かれた取引先の社長から開いた話ですが、「お金は生来寂しがり屋で、お金の集まる処に寄って来るもの」なのだとか。店や会社の玄関に赤色・金色の魚を置くのは、「魚をお金に見立ててお金が沢山集まっているように見える⇒外のお金が寄って来る」という風水の教えを今でも守っている顕れなのだとか。
 そう言えば子供の頃、友達の家に遊びに行くと玄関の靴箱の上に金魚鉢があったなあ。
 鯉は「出世魚」とも呼ばれて、端午の節句の鯉のぼりがお馴染みですが、都市化が進んで玄関の金魚や鯉のぼりを掲げなくなった事が、日本経済の長期低迷の一因だったのかもしれませんね。

 この願掛けなら私も便乗せねばと思い、先日妻と一緒に郊外の観賞魚専門の養殖場に行ってみたら、その名もズバリ「KOI CENTER」。
 新潟や広島から輸入された紅白・三色・五色・孔雀等々、錦鯉の稚魚が広い養殖場で何千匹も養殖されていました。
 東南アジアだけでなく遠くは中東諸国・EUからもお金持ちの方や養殖業者が買い付けに来るのだとか。いやはや錦鯉が海外でこれだけ注目されているビジネスだとは気付きませんでした。
 海外のお金持ちが豪邸を建て庭をこしらえ、香川から盆栽を、広島・新潟から錦鯉を輸出する。日本の地方毎の伝統や美術感がそのまま海外で受け入れられている好例と言えましょう。

 もう一つ触れておかねばならないのが、やはりうどん。
 讃岐うどんの海外認知度が次第に上がっているのは事実ですし、東南アジア諸国でもシンガポールは勿論、今ではカンボジアにもうどん屋があります。
 でも、いつも思ってしまうのが、讃岐人として海外で食べるうどんのどこまでを讃岐うどんと認めたら良いのかと言う内面的な定義付けの問題。逆に言えば、乾麺や冷凍うどんに始まり、本格讃岐うどんから一般レストランのうどんメニューまで、うどんは今や海外のそこかしこで氾濫しており、どこかでOK or Not OKの線引きをしないと子供の頃から郷里でうどんに慣れ親しんだ私にとって、讃岐うどんと看板にある店で、時に自己矛盾に陥ることがあります。

 やっぱり外したくない条件が「日本で使用している粉」を使い「打ちたて」の麺を「茹でたて」のまま食べるという3点。
 と言うのも、私の行き着いた讃岐うどんの結論は、「讃岐うどんは五感で食べる」にあるからです。
 郷里でうどん屋に通った昔を思い出すと、
1)おばちゃんの「いらっしゃーい」の掛け声
  ⇒耳で食べる
2)粉の匂いが少し混じった湯気が鼻腔に入る
  ⇒鼻で食べる
3)釜の中で苑でてるうどんが泳いでる
  ⇒目で食べる
4)勿論、食感・味・喉越しを楽しむ
  ⇒口で食べる
5)食後の胃袋の温かさ
  ⇒腹で食べる
の5感は店内での一つの流れとしてとても重要で、この前後では、店に向う前に「今日昼どうするな?うどんでも食いに行くな?」の「でも」という、ちょっとだけ目下にうどんを見てる意識と、店出た後に膨れたお腹を擦りながら「これでこの値段だったらまあ許せるなあ」的にちょっと偉そうな気分になる満足感が、昼飯時の僅か数十分の中で体感出来るところが、私の讃岐うどんの拘り=原点であるからです。
 東南アジアにうどん屋は数あれど、この合格レベルに近くても100点満点となるとなかなか見当たりません。食材調達や職人確保など、それだけ海外で讃岐うどんを作ると言うこと自体が難しいのでしょう。
 でも日本の代表食としてこれからも讃岐うどんを応援し続けていきたいと思います。

 最後になりましたが、シンガポールにお越しの際は支部一同歓待させて頂きますので是非お声かけ下さい。皆様の益々のご多幸とご発展をお祈り申し上げます。

東京玉翠会シンガポール支部
連絡先 三木重昌(S60卒)miki@toyotsu.com.sg